山之口 貘

高校時代の同級生のメールのやりとりで、

当時の現代国語の授業の1シーンを思い出した。

担当の先生は、その日僕たちに、

教科書には載っていない「座布団」という詩を紹介した。


土の上には床がある

床の上には畳がある

畳の上にあるのが座布団でその上にあるのが楽という

・・・略・・・

楽に座ったさびしさよ


作者の貘は、明治から昭和の沖縄出身の詩人。
沖縄に来てから好きになった。

「生活の柄」が面白い。

歩き疲れては
夜空と陸との隙間にもぐり込んで寝たのである
草に埋もれて寝たのである
ところ構わず寝たのである
寝たのであるが
ねむれたものでもあったのか!
このごろはねむれない
陸を敷いてはねむれない
揺り起こされてはねむれない
この生活の柄が夏むきなのか!
寝たかとおもうと冷気にからかわれて
秋は 浮浪人のままではねむれない


この詩は、「自衛隊に入ろう」の高田渡が歌にしている。

https://www.youtube.com/watch?v=XcUhACXKx7g

次も、貧乏暮らしの貘のユーモア。


自己紹介

ここに寄り集まった諸氏よ
先ほどから諸氏の位置に就いて考えているうちに
考えている僕の姿に僕は気がついたのであります

僕ですか?
これはまことに己惚れるようですか
びんぼうなのであります


芭蕉布

上京してからかれこれ
十年ばかり経っての夏のことだ
とおい母から芭蕉布を送って来た
芭蕉布は母の手織りで
いざりばたの母を思い出したりした
暑いときには芭蕉布に限ると云う
母の言葉をおもい出したりして
沖縄のにおいをなつかしんだものだ
芭蕉布はすぐに仕立てられて
ぼくの着物になったのだが
たたの一度もそれを着ないうちに
二十年も過ぎて今日になったのだ
もちろん失くしたのでもなければ
着惜しみをしているのでもないのだ
出して来たかとおもうと
すぐにまた入れるという風に
質屋さんのおつき合いで
着ている暇がないのだ


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