リンゴの唄

75年前、昭和20年の10日月11日、

松竹制作の映画「そよ風」が封切りされた。

これは、戦後GHQ検閲第一号だったのだが、

その主題歌は敗戦後の暗い日本を明るくした。

それにしても、敗戦から僅か2ヶ月。

映画制作の皆さんの情熱には頭が下がる。

15年間の長い戦争の時代を終えて、庶民が直面したのは、

食糧及びモノの不足。日々の厳しい暮らしの中ではあるが、

平和の喜びは大きかっただろう。B29も原爆も襲ってこない。

戦地から引き揚げてきた父や夫との再会は、無上の喜びの涙を流させた。

そんな時、ヤミ市のおんぼろラジオから流れてきたのは…


赤いリンゴに 唇寄せて

黙って見ている 青い空

「リンゴの唄」だったのだ。

(サトウハチロー作詞  万城目正作曲)


リンゴは何にも 言わないけれど

リンゴの気持ちは よく分かる

リンゴ可愛や 可愛やリンゴ


唄いましょうか リンゴの唄を

二人で唄えば なお楽し

みんなで唄えば 尚なお嬉しい

リンゴの気持ちを 伝えよか

リンゴ可愛いや 可愛いやリンゴ


歌ったのは、並木路子。

彼女は、戦争で戦争で父親と兄を失い、東京大空襲では母親を亡くしている。

その時、自らは隅田川に飛び込んで九死に一生を得るという体験をしている。

そんな戦争の影を背負いながら、懸命に歌ったのが、
「リンゴの唄」だったのだ。


あの子よい子だ 気立てのよい子

リンゴによく似た 可愛い子

誰方が言ったか うれしい噂

軽いクシャミも 飛んででる

リンゴ可愛いや 可愛やリンゴ

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