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大人の人生論はもうたくさんだ!
ニューミュージックこそぼくらのバイブルだ~
フォーク、そしてニューミュージックを生きて
きた音楽作家・富澤一誠が、現代の青春につい
て、みずからの体験をまじえながら語る、
熱いメッセージ。
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旺文社文庫、1983年の発行。もう、
40年近く前なのだ。
僕と同じ年頃として、フォーク、ニュー
ミュージックを体験した富澤氏の言いたい
ことが、ほとんど100%合点がいく。
たしかに当時、僕はフォーク、ニュー
ミュージックというタイトルの青春物語を
生きていたのだ。
青春の日々の中で、忘れられない一日がある。
特別な出来事ではない。ただの、夏の一日
なのだが、甘えん坊の僕のワガママな性格を
物語る、今では、ちょっと酸っぱ味の思い出。
夏休みか日曜日だったのか、高校生が何も
することもないある日。
原因は覚えていないが、僕はお母ちゃんと
喧嘩した。反抗期で、いつものワガママな僕の
一人相撲だったと思う。
とにかく、家に居づらくなった僕は、
自転車で出かけた。直ぐに、ハンドルは京都に
向かった。家から出来るだけ遠くへ。
京都までは、初めてのチャレンジだった。
不安だったが、ペダルを漕ぎながら心の中で
口ずさんでいたのはフォークソング。
フォーク・クルセダーズの「青年は荒野を
めざす」、岡林信康の「友よ」、シューベ
ルツの「風」など。
その頃は、自転車が一番で、フォークソング
が2番目の親友だった。
晴天の自転車日和、ペダルは快調だった。
途中、トラックの運ちゃんが、僕を追い抜く
時に声を掛けてくれた。
「頑張れー」
汗をかきながら季節の風を感じる僕は、
家出はどうでも良くなっていた。ひたすら
ペダルを漕ぎ黙々と足を回転させる。
自転車君が、どんどん前に進む。とにかく、
僕は前に向かってしっかり進んでいる。
ひとりで行くんだ 幸せに背を向けて
さらば恋人よ なつかしい歌よ友よ
青年は青年は 荒野をめざす
(青年は荒野をめざす)
人は誰もただ一人旅に出て
人は誰もふるさとを振り返る
ちょっぴりさみしくて振り返っても
そにはただ風が吹いているだけ
何かを求めて振り返っても
そこにはただ風が吹いているだけ
振り返らずただ一人一歩ずつ
振り返らず泣かないで歩くんだ
(風)
鴨川に着いた時は、達成感で大満足だった。
途中で引き返すことなく、
目的の京都まで走った。
お店で買った三ツ矢サイダーを、ほとんど
一気飲みした僕は、休むことなく直ぐに
ハンドルを家路に向けた。
家に帰って、お母ちゃんから代金をもらって、
銭湯に行った。そして、家に戻ると、そのころ
大好きだった稲荷寿司が待っていた。
お母ちゃんは、僕が何処まで行ったのかを
訊かなかった。
人生で、繰り返し思い出す青春の1ページだ。
さて、高校卒業後、僕は昼間は会社に勤めて
夜の大学に通った。友達と一緒にフォークの
サークルを作って、学園祭で歌ったり、
ラジオの勝ち抜き番組にチャレンジしたりして、
それなりに青春を楽しんだ。
真冬の夜、大阪市内を思い切りペダルを漕いで
帰ると、練炭火鉢に関東炊きの鍋が置かれて
いた。お母ちゃんは、布団の中で僕の帰りを
待っていた。
当時、よく口ずさんだのは、
吉田拓郎の「結婚しようよ」だった。
僕の髪が肩までのびて
君と同じになったら
約束通り 町の教会で
結婚しようよ mmm
当時、僕も髪を随分とのばしていた。
自転車に乗って、長い髪をなびかせる。
自分ではカッコいいと思っていたが、
お母ちゃんは、毎日のように
「切りなさい」とぼやいていた。
それでも、もう喧嘩するようなことはなかった。
晴輪雨読
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